おやつカルパス

さくぶんれんしゅう帳

車を買う決意をした日の記録

まだ契約していないけど。

 

 

令和2年2月22日、愛車のパッソちゃんをガードレールで擦ってしまった。

 

幸いガードレールの方は傷ついていない。わたしにも怪我ひとつない。完全なる自損事故で、他人に怪我をさせたり他人のものを壊したりしてもいない。

 

それでもパッソちゃんには大きな擦り傷と凹みができてしまった。

 

これまで5年間乗ってきたパッソちゃん、目立った傷はほとんどついていなかったのに、助手席のドアから後部座席のドアまで、ズガガガガっといってしまった。

 

ショックだった。

 

パッソちゃんは大学を出て就職するとき、中古車で買った。

 

わたしが住んでいたような田舎では、新卒一年目で車を持つことは珍しくなかった。職場は公共交通機関ではどう頑張っても通勤できない場所にあったし、歩くのも遠いし、暑くても寒くても雨でも雪でも自転車で行くのも嫌だった。

 

金利を安くするために親の名義でローンを組んでもらい、2年半かけて毎月少しずつ親に返した。返し終わった時は嬉しかった。これでこのパッソちゃんはわたしのものだと思った。

 

パッソちゃんは買った時点で既に8万キロほど走っていて、お世辞にも新しい車とは言えなかったが、それでもわたしの大事なパートナーだった。

今の街に引っ越してくるときには、実家にあった荷物をあれこれ沢山積んで、片道2時間の道のりを2往復した。後部座席に3人友達を乗せて、定員ギリギリのぎゅうぎゅう詰めで旅行に行ったこともあった。一番近いコンビニまで徒歩20分の田舎で、わたしを自由にしてくれたのがパッソちゃんだった。この子に乗ればどこにでも行けると思うとわくわくした。

 

これまで事故なんてほとんどしたことないし、3年以上毎日のように通っている道だ。確かに細い道だが、別に対向車がいたわけでもない。それなのに、車幅感覚を間違えて、ハンドルを切るタイミングを見誤って、思いっきりガードレールに車体を擦り付けてしまった。文字にするとますます間抜けだな。

 

そんなことある!? って思ったし、信じたくなかったし、次に見たときあの傷がなくなっていたらいいのに、と思った。しかし何度見ても、傷は消えなかった。見れば見るほど悲しくなった。

 

ショックを受けた頭でわたしは考えた。

例え走行には支障がない傷とは言っても、この見た目でこのまま走り続けるのは絶対嫌だ。ではどうするか。直すか、買い替えるか、だ。

 

直すとすると幾らかかるのか、検討もつかなかった。大きな傷だし、凹んでいるし。1万や2万では済まないだろうな、ということは想像がついた。5万円かな。10万円かな。

 

正直に言って、それだけお金をかけて直すなら買い替えたかった。

 

我がパッソちゃんは中古だったこともあり、初年度から8年以上経っていて、走行距離も10万をゆうに超えている。エンジンも次第に弱ってきていて、普通車のくせに社用車の新車の軽よりもパワーがなくて燃費も悪かった。そのくせ税金は軽の何倍もかかった。そして以前住んでいた田舎ではちょうど良かったサイズが、今住んでいる街を走るには少し大きいように感じていた。道路をまっすぐ走る分にはいいんだけど、駐車場とか狭くて怖い。パッソごときでそう感じるわたしは一生この街でファミリーカーとか乗れない。

 

そしてタイミングがいいのか悪いのか、パッソちゃんは車検が来月に迫ってきていた。この度の車検は通そうと思ってお金の用意もしていたが、先述の理由によって2年後の車検がくる頃には本気で代替えを考えようとこっそり思っていた。つまり、あと2年しか乗らないつもりだったのだ。

 

2年後には手放すつもりの車を、何万円もかけて今このタイミングで修理するのはバカバカしく思えた。

修理したらきっと2年後には「あのときお金かけて直したし……」と手放し難くなってもう2年乗りそうだし、そうこうするうちに今度は車の他の部分にガタが来てまた修理代がかかってしまう。少なくとも冬用タイヤはあと1〜2年で替えなきゃマズい。

 

そんなこんなで、なんとかお金を工面できるなら、車を買い換えようと決意した。

 

 

事情を聞いて地元の隣県から駆けつけてきてくれた母と一緒に、自動車屋をいくつか回った。

 

小さい頃から、転んだりものをひっくり返したりするとよく母に叱られていたので、この度も叱られるだろうと覚悟していたが、母は「怪我がなくてよかった、対人事故じゃなくてよかった」と言っただけで叱らなかった。

「今は馬鹿みたいに年に何度も大阪に遊びに行っちゃってるけど、それを辞めたらなんとか車を買えるんじゃないかと思う」と話したときも、「そうやって遊べるのが楽しみなんじゃないの? 楽しみがなくなって悲しくならない?」と心配してくれた。

 

まあ寂しいけど、流石にちょっとホイホイ遠出しすぎだと反省していたところ(GWに2回も大阪行ったりとか、映画見るためだけに新幹線乗ったりとか)だし、ウィザワ5周年に合わせて買ったユニバの年パスも切れたし、年パス持ってる期間は沢山遊びに行って満喫したし、めちゃくちゃ見たかった夜のパレードも見れたし。

 

それを言うと母も納得してくれたようで、あれこれ一緒に検討してくれた。

 

そうしていくつか見て回った店の中に、年式の若い中古のラパンがあった。もとは試乗車や代車として使われていた車だそうで、見た目も内装も綺麗だし走行距離も少ない。ほとんど同じ条件で何色か選べるということなので、希望のノクターンブルーの現車がある少し遠い店まで見に行った。ラパンと言えばパステルカラーのボディにホワイトのルーフのツートンカラーをよく目にするが、わたしはそんなオンナノコオンナノコした可愛らしい色はできれば避けたかった(パッソちゃんはピンクだけど)(車屋のおじさんは「女性にはアイボリーが人気」と熱心に勧めてきたけど)。

 

ノクターンブルーのラパンは可愛かった。あのラパンの可愛らしいカタチに、媚びないネイビーブルーのカラー。可愛らしすぎず、シンプルすぎない見た目が身の丈に合っている感じでしっくりきた。

母も「さっきのアイボリーのツートンが可愛くてこれにすればいいのにって思っていたけど、現車でノクターンブルーを見たらこっちの方があなたに似合うね」と言ってくれた。現物を見る前から、自分に似合う色を選べていたことが嬉しかった。

 

そんなこんなで、書類やらなにやら準備して、何事もなければ来週契約するという話になった。ガードレールにパッソちゃんを擦り付けてから、わずか3日で決断した。

 

 

わたしは、感情と脳味噌のキャパが小さくて不測の事態に弱くて、思わぬハプニングが起こるとすぐ動転したりパニックになったりしてしまうタイプだ。

でもこの度は車を傷つけてしまってから店を回って悩んで買う車を決めるまで、一度もパニックになったり、泣いたりしなかった。

傷ついたとは言ってもパッソちゃんは普通に走るんだし、親もすぐに駆けつけてくれたし、その程度で泣くなよ、と思われそうだけど、数年前のわたしだったらこの一連の出来事の中で何度かキャパオーバーを起こして泣いていたと思う。

泣かずにきちんと物事に対処できたのは歳ばかり取った子供のようだった数年前に比べたら大人になれたのかな、と思えた。いい歳して今更何を言ってんだろ。

 

パッソちゃんを傷つけてから1週間、替えるまでは仕方ないと思ってキズモノのパッソちゃんに乗っている。

時間が経つにつれて、買い替えるのは勿体無いような気持ちになってくる。だって動くのは動くし、車の外観を自分で見ている時間なんてほとんどないのだ。

 

でも私は一年半ほど前、「30になるまでに車を替える」という目標を立てたのだ。新車じゃないけど、ローン組むことになるけど、一応はその目標が叶うのだ。車のローンが終わったら引っ越しもしたい。今の部屋も広くて綺麗で快適だけど、会社の寮扱いの借り上げ賃貸なので自分の力で生きている感じがしなくて嫌だ。

 

たまたま今日、ツイッターで「人は腹を括ったとき大人になる」という説を目にした。腹を括って車を買えば、少なくともお金の使い方は今までと変わるだろうし、先のことを色々考えるようになるだろうし。少しは大人になれますかね。

 

 

3/1 追記

契約してきました!!

 

転職して引っ越した頃には殆ど空っぽだった貯金用の口座に、頭金を出せるくらいの金額は貯まっているのを改めて見て、ああ今まで頑張って生きてきたな………って感慨深くなりました。

それだけじゃなくて、奨学金も毎月毎月、ああこの金が手元に余ればあんなことやこんなことができるのに…… と思いながら返してる。あと18年くらいそれが続く。滞納とかもしてない。偉い。私偉いよ〜〜〜!!! 頑張って生きてる!!!

今までだけじゃなくてこれからも頑張って生きよ。

 

もしこれが実家暮らしだったら、車が要らない都会に住んでたら、奨学金を借りなかったら、もっと自由に使えるお金が沢山あったなぁってよく思うけど、言うても仕方ないし日々の楽しみは色々あるからこれからも楽しく生きたいね!!!!